「吉川むかしばなし・力石(ちからいし)文と絵・杉崎則子」を(^^)
むかし、吉川の小松川村に、たけが二尺ほどもある大きな大きな石があったと。
小松川の若者は、村まつりや仕事のあいまにその石で力くらべをし、とても大切にしておった。
いつものように力くらべをしているところへ、
中井村の喜三郎という若者がやってきた。
「なんでぇ、こんな石かつぐなんざぁ朝めしまえだ」
いきなり喜三郎、石をけとばした。
怒ったのは、小松川の若者。
「なにっ、そんなこというならこの石かついでみろ」
「よし、この石かつげたら、もらっていくぞ」
喜三郎は、うでにおとな五人をぶらさげられるほどの力もちじゃった。
軽々と石をかつぎあげた。
「かえしてほしけりゃ、いつでもとりにこい」
そういうと、自分の村へゆうゆうと帰ってしまった。
くやしがった小松川の若者は、何度も石を持ち帰ろうとしたが、
誰もかつぐことができなかった。
そこで喜三郎は、村の東眼寺に石をあずけることにした。
そして小松川の若者にかわってたいそう大切にしておったと。
その石は力石とよばれ、いまでも東眼寺にあるそうな。
中原恵人