好評だった「吉川むかしばなし」の投稿(^^)
今回は「なまず太朗」(文 くじらおかえりこ・絵 ピーターラビット)を(^^)
むかし中川にたいそう気のあらいなまずのおとこっこが住んでおったと。
「いたいよ いたいよ なまず太朗のいじめっこー」
「これこれ やめなされ」
と、かたっけじいさま。
なまず太朗は、自分が世界一大きくってえらいと思っておった。
ある日のこと、
一羽のゆりかもめが海からやってきた。
「なんだい さっきからみていれば……。おまえみたいなやつを井の中のなまずっていうんだ。海へ行ってみるがいい。おまえなんかくじらのおやじさまの鼻息で、ひとっとびさ」
なまず太朗びっくりしたのなんのって、なんせ海も知らなきゃ、くじらも知らぬ。
「よし、おいら くじらとやらにあいにいくぞ」なまず太朗、ふるさとをあとに長い旅にでる。
ホイサッ ホイサッ
「はらへったなぁ、まだかなぁ、くじらとやらはどこなんだ」
ホイサッ ホイサッ
「ややっ、川の水がやけにしょっぱいぞ」
ホイサッ ホイサッ
「わあっ、だれだ」
「おまえが、ゆりかもめがいっていたなまず太朗か。体がでっかいといばっておるそうだが、だいじなのは、心のでかさじゃ。
わしらくじらは、体もでかいが心もでかい。心のでかさはやさしさじゃ」
なまず太朗、くじらや海のおおきさにびっくり。
「なんて世の中、ひろいんだ」
「おいら、心のでっかいなまずになって、みんなのために生きるんだ」
なまず太朗、とぶようにふるさとへ帰ったと。
ふるさとにもどったなまず太朗は、おどろくほど大きくなっていた。
かったけじいさまだけは知っていた。
海を知ったなまず太朗が、心も大きく、やさしくなったことを……。
それからというもの、なまず太朗、
みんなをとてもだいじにしたそうな。
中原恵人